(写真:ロイター)
5年にわたり内戦が続くシリアで12日午後7時(日本時間13日午前1時)、ロシアとアメリカの仲介による停戦が発効しました。しかし、今年2月の停戦合意が守られなかっただけに、今回も予断を許さない状況で、仲介したアメリカとロシアは、まずは停戦が1週間続くかどうかを見極めたいとしています。
停戦合意によりますと、シリア政府軍と反政府勢力はまず12日午後7時から48時間の一時停戦に入りました。この後、戦闘が再開されない限り期限が来るたびに、一時停戦は自動的に48時間ずつ延長されていく仕組みです。一時停戦が一週間続けば、アメリカとロシアが過激派組織「(IS)イスラム国」や国際テロ組織アルカイダ系だったイスラム過激派「ヌスラ戦線」に対して、連携作戦を展開することになっています。
積極的な兆し
アサド政権側も主要な反体制派側も停戦を順守する姿勢を見せています。12日の日中も、各地で激しい戦闘や空爆が続きましたが、日没後はおおむね収まっているもようです。在イギリスの民間組織「シリア人権観測所」は停戦開始後、「南西部の一部で砲撃が続いているが、国内の大部分で砲火が止まった」との見方を示しました。アメリカのケリー国務長官も12日、「結論を出すのは早計だが、戦闘の減少が報告されている」と述べました。
また、ケリー長官は、今回の合意はシリア内戦の平和的解決策を見出すスタートであると評価しました。ロシアのラブロフ外相は、ロシアはアメリカと連携し、今回の停戦合意が遵守されるようにすると語りました。
大きな試練
シリアでは今年2月にも停戦が発効しましたが、それから数日のうちにアレッポなどで空爆が報告され、結局失敗に終わっています。ロシアのラブロフ外相は、今回の停戦合意が完全に実施されることは保証できないと述べ、実効性に疑問符をつけました。
また、ISやヌスラ戦線は一時停戦の対象に含まれていませんが、ヌスラ戦線は反体制派の一部と密接に協力しており、両者を厳密に区別するのは不可能です。こうした状況が、二月の一時停戦後、ロシア軍やアサド政権軍が、反体制派を「テロ組織だ」と断定して攻撃したとする情報の背景となっています。
そして、停戦合意を監視する仕組みがないという問題も指摘されています。2月の停戦合意が失敗した原因の一つに、監視の仕組みがなかったことがあるとみられています。
停戦を確かなものにするには米ロの協調が欠かせません。内戦が周辺国も交え、大国の代理戦争の様相を強める中、どこまで本気なのかが見えてきません。しかし、今回の停戦合意が十分に実施され、シリア内戦の解決に役立つのはシリアの人々をはじめ、平和を愛する世界の人々の共通の願いです。